近年、世界的な抹茶ブームが続いています。
鮮やかな緑色、日本らしい香り、さまざまなスイーツや飲み物に取り入れやすいことから、抹茶は日本国内だけでなく海外でも親しまれる存在になりました。抹茶ラテや抹茶スイーツを目当てに日本を訪れる観光客も多く、需要の高まりによって、一部では原料の確保が難しくなっているともいわれています。
そのような中で、抹茶に続く新しい緑色の素材として注目され始めているのが、私たち日本人にとって身近な植物である「よもぎ」です。
よもぎラテ、よもぎ団子、よもぎの焼き菓子、よもぎ茶、よもぎパウダー、よもぎ風呂、そしてよもぎ蒸し。
これまで草餅や昔ながらの健康茶というイメージが強かったよもぎが、現在はカフェメニューや美容、温活、セルフケアなど、幅広い分野で活用されています。
なかでも注目したいのが、奈良県東吉野村の自然の中で育てられている「深吉野よもぎ」です。
深吉野よもぎは、単によもぎを収穫して販売しているだけのものではありません。山間部の自然環境、地域に残る歴史、生産者による栽培、収穫後の選別や加工など、多くの人の手と時間によって生み出されています。
この記事では、なぜ今よもぎが「ネクスト抹茶」と呼ばれているのかをひもときながら、深吉野よもぎの特徴と、その背景にある人・自然・地域をつなぐものづくりについて紹介します。
昔ながらのよもぎが「ネクスト抹茶」として注目される理由
よもぎは、日本全国に自生する身近な植物です。
道端や土手、田畑の周辺などで見かけることも多く、春になると新しい芽を伸ばします。草餅や団子に使われるほか、お茶や入浴など、地域や家庭によってさまざまな形で利用されてきました。
あまりに身近なため、「雑草のようなもの」と思われることもあります。しかし、近年はよもぎの鮮やかな色、独特の香り、ノンカフェインという特徴が改めて見直されています。
動画内で紹介されていた滋賀県長浜市のカフェでは、抹茶ラテのように茶筅で立てた「よもぎラテ」が提供されていました。
見た目は鮮やかな緑色ですが、口に含むと抹茶とは異なる、爽やかでやさしい和ハーブの香りが広がります。よもぎ団子や草餅だけでなく、キャロットケーキなどの洋菓子にも取り入れられており、昔ながらの素材が現代的なメニューへと生まれ変わっています。
よもぎが注目される理由の一つが、少ない量でも鮮やかな緑色を表現しやすいことです。
飲み物や菓子に加えた際に色が分かりやすく、写真や動画でも印象に残りやすいため、カフェメニューや商品開発との相性が良いと考えられています。
また、よもぎそのものにはカフェインが含まれていません。抹茶やコーヒーとは異なるノンカフェイン素材として、時間帯を問わず楽しみやすい点も魅力です。
もちろん、よもぎと抹茶は、それぞれ味も香りも異なる植物です。よもぎは、抹茶の完全な代用品というより、抹茶とは別の価値を持つ日本独自の和ハーブといえるでしょう。
抹茶のような鮮やかな緑色を持ちながら、よもぎならではの香りと物語がある。その個性が、「ネクスト抹茶」と呼ばれる理由なのです。
食べるだけではない。温活やセルフケアにも広がるよもぎ

よもぎへの注目は、飲食分野だけにとどまりません。
近年は、よもぎを煮出した蒸気で体を温める「よもぎ蒸し」も広く知られるようになりました。
よもぎ蒸しは、韓国などで親しまれてきた民間的な温浴方法です。専用の椅子に座り、煮出したよもぎの蒸気を浴びることで、体をじんわりと温めます。
動画では、よもぎ蒸しを利用する人から、「体の内側からポカポカするように感じる」「しっかり休みたいときに利用している」といった声が紹介されていました。
よもぎ蒸しのサロンも増えており、番組内では全国に8,000店舗以上あり、3年間で約1.8倍に増えたと伝えられています。
ただし、よもぎ蒸しやよもぎ茶は医療行為ではありません。病気の治療や症状の改善を目的とするのではなく、入浴や香りを楽しむことと同じように、日常のリラックスタイムや温活の一つとして取り入れることが大切です。
このように、よもぎは「食べるもの」から、香りを楽しみ、体を温め、暮らしを整えるための素材へと活用の幅を広げています。
奈良県東吉野村で育つ「深吉野よもぎ」とは
よもぎの需要が高まる中で、改めて注目されている産地の一つが、奈良県東吉野村です。
東吉野村は、奈良県の東部に位置する山間の村です。山々に囲まれ、澄んだ空気と清らかな水、深い霧、昼夜の寒暖差に恵まれています。
深吉野よもぎは、この東吉野村の自然の中で、農薬を使わず、人の手によって大切に育てられています。寒暖差のある気候、澄んだ空気、清らかな水の中で育つことにより、香り高く、やさしい風味を持つことが特徴とされています。
よもぎは日本全国に自生していますが、どこで育っても同じ品質になるわけではありません。
育つ土地、日当たり、気温、水分、土壌、収穫時期、乾燥方法によって、香りや色、風味には違いが生まれます。
東吉野村では、青々とした山々、深い霧、満天の星空が広がる自然環境の中で、よもぎが育てられています。地域では、よもぎを含む薬草が古くから人々の暮らしに取り入れられてきました。
一見すると、どこにでも生えている植物かもしれません。
しかし、自然環境を整え、毎年安定して育て、適切な時期に収穫し、商品として使える状態に加工するためには、多くの技術と手間が必要です。
深吉野よもぎは、自然に生えているものを集めるだけではなく、栽培から加工まで丁寧に管理された「農産物」であり、「地域のブランド」なのです。
東吉野村に残る、よもぎと弘法大師の伝承
東吉野村とよもぎの関係は、近年になって始まったものではありません。
東吉野村の鷲家地区には、弘法大師にまつわるよもぎの伝承が残されています。
添付記事では、この土地のよもぎは香りが良く、灰汁抜きをしなくても食べられるようになったという弘法伝説が紹介されています。
動画でも、弘法大師・空海がこの地域のよもぎを食べたという伝承が取り上げられ、平安時代にはすでによもぎの利用や生産が行われていた可能性が伝えられていました。
伝承が歴史的事実と完全に一致するかどうかとは別に、重要なのは、東吉野村で長い間よもぎが人々の暮らしと結びついてきたことです。
春に芽吹いたよもぎを摘み、食卓に取り入れる。香りを楽しみ、季節の訪れを感じる。地域にある植物を無駄にせず、暮らしの知恵として使う。
よもぎは、単なる農作物ではなく、土地の記憶や文化を受け継ぐ植物でもあります。
現代の深吉野よもぎづくりは、こうした地域の歴史を守りながら、今の暮らしに合う商品として新しく届け直す取り組みといえるでしょう。
深吉野の自然が育む、豊かな香りとやさしい風味

深吉野よもぎの大きな特徴として挙げられるのが、香りです。
よもぎの葉を手で揉むと、青々しさの中に爽やかさを感じる、独特の香りが広がります。動画内でも、摘んだよもぎを揉んだ取材者が「ハーブの香りみたい」と驚く場面がありました。
よもぎは「和ハーブ」や「ハーブの女王」と表現されることがあります。
東吉野村の山間部は、昼と夜の気温差が大きく、霧も多い環境です。添付記事では、このような環境の中で育つことで、香り豊かで風味の良いよもぎに育つと説明されています。
深吉野よもぎは、香りが強いだけではなく、アクやえぐみが比較的少なく、まろやかでやさしい風味を持つとされています。
一般的な野生のよもぎは、収穫した場所や時期によって、苦味や渋み、硬さなどに差が出ることがあります。一方、栽培された深吉野よもぎは、収穫時期や加工方法を管理することで、安定した品質を目指しています。
よもぎ茶にしたときの飲みやすさ、菓子に練り込んだときの香り、ラテにしたときの鮮やかな色。
さまざまな使い方ができるのは、素材そのものの香りや味が丁寧に整えられているからです。
収穫して終わりではない。品質を左右する選別と加工

高品質なよもぎを届けるためには、栽培だけでなく、収穫後の作業も欠かせません。
よもぎは生命力が強く、春になると自然に芽を出し、気温が下がる季節まで成長を続けます。動画で紹介された東吉野村の畑では、茶葉の収穫に使われるものと同様の機械を使い、初夏から秋頃まで収穫が行われていました。
ただし、収穫したよもぎをそのまま商品にできるわけではありません。
状態の良い葉を選び、異物や傷んだ部分を取り除き、用途に合わせて洗浄、乾燥、粉砕、冷凍などの加工を行う必要があります。
香りや鮮やかな緑色を残すためには、乾燥時の温度や湿度も重要です。高温で一気に乾燥させれば効率は上がりますが、香りや色が変化することがあります。
深吉野よもぎでは、素材の風味や色をできる限り損なわないように、加工・乾燥方法を工夫しています。添付記事でも、収穫時期の管理、丁寧な選別、温度を意識した乾燥などが、品質を支える重要な工程として紹介されています。
これは、機械を使うことが悪いという意味ではありません。
大切なのは、生産量と品質のバランスを考えながら、そのよもぎに適した方法を選ぶことです。人の目と手による確認、機械による効率化、それぞれの長所を生かすことで、継続的な生産につながります。
深吉野よもぎの価値は、東吉野村で育ったという産地名だけではなく、収穫後の見えない工程にも支えられているのです。
需要が増えても、国産よもぎの生産者は少ない
よもぎラテやよもぎ蒸しなど、よもぎを利用する機会は増えています。
しかし、需要が増えている一方で、国内で事業としてよもぎを栽培する農家は、決して多くありません。
動画では、国内で流通するよもぎの多くを輸入品に頼っており、国産品の割合は2〜3割程度ともいわれていることが紹介されていました。
よもぎは日本中に自生しているため、「簡単に手に入るのではないか」と思われがちです。
ところが、食品や入浴用の商品として継続的に販売するには、一定量を安定して収穫しなければなりません。栽培場所の管理、雑草対策、収穫、選別、洗浄、乾燥、保管など、多くの作業が必要です。
それにもかかわらず、これまでよもぎの取引価格はそれほど高くなく、農業として十分な収益を得ることが難しい状況がありました。
さらに、山間地域では農業従事者の高齢化も進んでいます。
需要はある。しかし、つくる人が少ない。
この生産と需要の差を埋めなければ、国産よもぎを将来にわたって安定して届けることはできません。
だからこそ、深吉野よもぎのように、産地、栽培方法、加工技術、香り、歴史、生産者の想いを一つの価値として伝えることが大切になります。
「安い野草」ではなく、価値ある地域資源として届ける
動画では、徳島県でよもぎ栽培に取り組む生産者も紹介されていました。
その生産者は、商社勤務からよもぎ農家へ転身し、生産したよもぎをブランド化しました。さらに、原料のまま販売するだけではなく、入浴剤やパウダーなどの商品を自ら製造することで、売上を伸ばしているといいます。
ここから分かるのは、よもぎ産業を続けるためには、単に安く大量に販売するのではなく、素材の背景にある価値を伝える必要があるということです。
よもぎは、多くの地域で「どこにでもある草」と見られてきました。
しかし、その土地で農薬を使わずに育てること、適切な時期に収穫すること、丁寧に選別すること、香りや色を残して加工することには、それぞれ人の手と技術が必要です。
さらに、畑を守ることは、地域の景観や農地を守ることにもつながります。生産者に適正な収益が戻れば、次の栽培に投資でき、新たな担い手が参加できる可能性も生まれます。
適正な価格で販売されることは、単なる値上げではありません。
生産する人、加工する人、販売する人、商品を使う人が無理なくつながり、よもぎづくりを未来へ残していくために必要な仕組みなのです。
深吉野よもぎがつなぐ、人と自然と地域
深吉野よもぎづくりの意味は、商品をつくることだけではありません。
東吉野村の自然の中でよもぎを育て、収穫し、加工し、全国へ届ける。その一連の流れは、人と自然、人と地域、人と人をつないでいます。
よもぎが育つためには、豊かな土、水、空気、日光が必要です。
生産者は自然を完全に支配するのではなく、天候や植物の状態を見ながら、収穫の時期を判断します。自然の力を借りながら、必要な部分を人の手で整えていきます。
そして、深吉野よもぎを手にした人は、その香りや色を通して、遠く離れた東吉野村の風景に触れることができます。
よもぎ茶をいれる時間。
よもぎラテを味わう時間。
お風呂に入れて香りを楽しむ時間。
よもぎを使ったお菓子を家族で囲む時間。
商品そのものは小さくても、その背景には東吉野村の山、霧、水、畑、生産者の仕事があります。
深吉野よもぎは、土地の自然をそのまま運ぶことはできなくても、香りや味を通して、その土地の空気を届けてくれる存在です。
抹茶の代わりではなく、よもぎにしかない価値を世界へ

よもぎが「ネクスト抹茶」と呼ばれることは、多くの人に知ってもらうきっかけになります。
鮮やかな緑色、ノンカフェイン、飲料や菓子に使いやすいことは、海外へ広がる上でも大きな魅力です。
一方で、よもぎを単なる「抹茶が不足したときの代替品」として扱ってしまうと、本来の価値が伝わりにくくなります。
抹茶には抹茶の歴史と文化があり、よもぎにはよもぎの歴史と暮らしがあります。
よもぎは、草餅や団子を通して日本の春を伝えてきました。家庭の食卓に並び、お茶として飲まれ、入浴にも使われてきました。そして地域によっては、世代を超えて受け継がれる伝承とも結びついています。
深吉野よもぎには、さらに東吉野村の自然、生産者の仕事、加工の技術という物語があります。
海外へ届けるときにも、色や価格だけでなく、「どこで、誰が、どのようにつくっているのか」を一緒に伝えることが重要です。
その物語まで含めて届けられたとき、よもぎは一時的なブームではなく、日本を代表する和ハーブとして長く愛される可能性を持つのではないでしょうか。
深吉野よもぎを暮らしに取り入れる方法
深吉野よもぎは、さまざまな形で日常生活に取り入れられます。
よもぎ茶として飲む場合は、乾燥した葉にお湯を注ぎ、香りを楽しみながらゆっくり味わいます。独特の風味が気になる場合は、最初は薄めに入れたり、ほうじ茶などと組み合わせたりすると飲みやすくなります。
よもぎパウダーは、ラテ、パン、焼き菓子、団子、スムージーなどに利用できます。色や香りが出やすいため、一度に多く入れすぎず、少量ずつ調整するのがポイントです。
乾燥葉は、お茶だけでなく入浴にも使えます。袋などに入れて湯船に浮かべれば、よもぎの香りを楽しむことができます。
なお、食品用、入浴用、よもぎ蒸し用では、製品の加工方法や衛生管理が異なる場合があります。必ず商品の用途や使用方法を確認し、目的に合った商品を選びましょう。
キク科植物にアレルギーがある人、妊娠中の人、治療中の病気がある人、肌が敏感な人などは、飲用や肌への使用前に医師などの専門家へ相談することも大切です。
まとめ|深吉野よもぎの新しい香りは、すでに広がり始めている

かつて、よもぎは土手や野原に生える身近な植物であり、家庭で草餅をつくるための季節の恵みでした。
そのよもぎが今、よもぎラテや焼き菓子、温活、入浴、セルフケアなど、新しい形で暮らしに取り入れられています。
抹茶の世界的な人気を背景に、「ネクスト抹茶」として注目されていることも、よもぎの価値を再発見するきっかけになっています。
奈良県東吉野村で育つ深吉野よもぎは、豊かな自然、地域に残る歴史、生産者の手仕事、丁寧な加工によってつくられています。
その価値は、鮮やかな緑色や豊かな香りだけではありません。
自然と向き合いながら農地を守ること。地域に伝わる植物文化を受け継ぐこと。よもぎに関わる人が持続的に仕事を続けられる仕組みをつくること。そして、東吉野村の魅力を、商品を通して多くの人へ届けること。
深吉野よもぎは、人と自然をつなぎ、過去から未来へ地域の物語を運ぶ存在です。
抹茶の代わりとしてではなく、よもぎだからこそ生み出せる香り、味、時間、物語を届けていく。
世界へ向けたよもぎの新しい香りは、すでに東吉野の山々から広がり始めています。

